Topに掲載されている3枚の写真は、それぞれインテリアの歴史のなかで記念碑的な役割を担っている壁紙や絨毯の貴重な写真です。インテリア文化研究所を象徴する写真として掲載しています。それぞれの由緒を解説いたします。

現存する最古の壁紙「ケンブリッジフラグメント」

現存する最古の壁紙は、ケンブリッジ大学図書館が収蔵する「ケンブリッジ・フラグメント」です。1911年にケンブリッジ大学の学長公舎を改装した際、2階寝室の天井から発見されました。断片しか残っていないのでケンブリッジ・フラグメントと呼ばれています。制作年代を特定できたのは、1509年のヘンリー8世の布告文書の裏面に印刷されていたからです。寸法は縦41cm×横28cmで、紙に柘榴紋様を黒インキで版木刷りしています。

 

左:ケンブリッジフラグメント<オリジナル>

右:ケンブリッジフラグメント<1930年復刻版>

現存する最古のカーペット「パジリク絨毯」

現存する世界最古のカーペットは、エルミタージュ美術館の保有するパジリク絨毯です。1947年、南ロシアにあるアルタイ山脈のパジリク渓谷でスキタイ族の木槨墓から縦200cm×巾183cmのウール絨毯が見つかりました。

この一帯は永久凍土で古墳内は天然の冷凍庫状態であるため、絨毯もほぼ原形を留めていました。パイルはトルコ結びで、結び目が約125万個という驚くべき密度です。

鑑定した結果、制作年代は紀元前5世紀頃と特定されました。

左:パジリク絨毯

右:パジリク絨毯<文様のスケッチ>

現存する日本最古の金唐革紙

現存する日本最古の壁紙は、明治19年に紙幣寮(現国立法人印刷局)で製作された金唐革紙です。納入先は輸出と鹿鳴館や皇室関係の宮殿・離宮などに限定されました。そのひとつが箱根離宮ですが、関東大震災で半壊します。半壊した建物は昭和5年に金唐革紙と一緒に沼津市愛鷹村へ校舎用に払い下げられます。

45年後、老朽化した校舎は取り壊され、金唐革紙は新校舎の倉庫奥にしまわれ、何時しか忘れ去られていましたが、平成9年、金唐革紙を研究する中年男性が愛鷹小学校を訪ね、倉庫片隅から発見します。この男性こそ、当時51歳の不肖私だったのです。

読売新聞平成9年2月19日夕刊